食物繊維の重要性

食物繊維について

若者を中心に食物繊維の不足が進行中

食物繊維を摂ることが私たちの体にとって大切だということは、誰でも知っています。では、私たち日本人は一日にどれくらいの食物繊維を摂取しているのでしょうか?きちんと目標量の食物繊維を摂取出来ているのでしょうか?

現在日本では食物繊維の目標摂取量は摂取カロリー1000kcalあたり10g、1日で20~25gとされています。しかし下のグラフを見ると分かるとおり、1998年の食物繊維摂取量は1日16.91gで、目標値を大きく下回り全く足りていません。年齢別で見ると中高年よりも若い人の食物繊維不足がより顕著です。

食品群別に見ると、野菜については大きく変化していないが、穀類、豆類、いも類からの摂取が減少している。特に穀類からの摂取は2分の1以下に減少してしまっている。

年代別に見ると、50歳代以上については20g近く摂取できているが、10~30歳代の年齢層では不足している傾向にある(「第六次改定日本人の栄養所要量」では、成人の場合は20~25g、1,000kcal当たりでは10gが目標摂取量。)

日本人の食物繊維摂取量が少なくなった大きな要因のひとつに米離れが挙げられます。上のグラフからも分かるように1960年頃から穀類での食物繊維摂取量が減り続け、1988年には1955年の3分の1以下になっています。これは米離れだけではなく、穀類の精製が進み、玄米ではなく白米を食べるようになったことも一因です。もうひとつの要因としては動物性食品の摂取量が増えたことが挙げられます。動物性食品には食物繊維が含まれていないので食物繊維の摂取量が減少してしまうのです。それが若い人たちに多いと言われている便秘につながっていると考えられます。

便量を増やして排便をスムーズにすることが大腸ガン予防につながる

食物繊維は便の量を増やしスムーズな排便を促します。便の量が少ないとそれだけ便が出にくくなってしまうため、食物繊維をきちんと摂取することは便秘の予防、改善にとても重要です。理想的な便の量は1日150g、大きさでいうと小ぶりのバナナ1~2本分です。食物繊維の目標摂取量の20~25gは、便が150g位になる目安の量といえます。毎日きちんと排便のある人は、便秘の人に比べて大腸ガンの発生が少ないことが分かっています。

一般に食べ物が大腸に留まる時間は20~30時間といわれていますが、便秘の人は100時間以上も大腸内に便がとどまることがあります。食べ物には発ガン物質が含まれていることもありますから、便秘の人はそれだけ発ガン物質が大腸壁に接触している時間が長くなります。

さらに最近の研究では、食物繊維が多い食事をとっていると、腸内細菌叢の代謝に影響することがわかってきています。特にステロイド・胆汁酸の代謝や有機酸合成への影響、大腸内環境を良好に保つ効果があるといわれており、大腸ガンの予防につながっているといわれています。

コレステロールや血糖値を下げる効果も

便秘解消以外にも食物繊維の有効性はあります。「高脂血症や糖尿病、高血圧の予防や改善」「有害物質の代謝促進」などです。

 

(1)高脂血症の予防と改善

食物繊維が多い食事をとっていると食物繊維にコレステロールが吸着して、便として排出されます。また、胆汁にはコレステロールからつくられる胆汁酸という成分が含まれています。胆汁酸は腸肝循環といって一度分泌されたものが再び吸収されてリサイクルして使われますが、この胆汁酸も食物繊維に吸着されると便となり排出されます。どんどん新しい胆汁酸がつくられるためにコレステロールが使われ、体内のコレステロールが減るわけです。最近では、腸内細菌が食物繊維を分解した時に出るプロピオン酸が、肝臓でコレステロールの合成を阻害しているという研究発表もされています。

(2)糖尿病の予防と改善

血糖値の急激な上昇は血液中の糖の代謝を促進するインスリンというホルモンの分泌を高めます。血糖値の急激な上昇が繰り返され、インスリンの多量分泌が長く続くと、インスリンの働きが弱くなり、血糖値が下がりにくいという現象が起きます。これが糖尿病のはじまりです。つまり糖尿病の予防、改善にはインスリンの急激な分泌を抑える必要があるわけです。食物繊維が多い食事、特に水に溶けてドロドロになる食物繊維をたくさん食べると、腸の中を食べ物がゆっくり進みます。すると栄養素の消化、吸収も遅くなります。糖の吸収がゆっくり進むと、血糖値の上昇もゆるやかになり、そのためインスリンの分泌もゆるやかになります。ですから、糖尿病の予防や改善には食物繊維の多い食事というのが大変重要になってくるのです。

(3)高血圧の予防と改善

食物繊維はコレステロールを吸着して体外に排出するだけでなく、ナトリウムを排出する効果もあります。また、低カロリーですから肥満対策にも有効です。ナトリウムを排出し、体重増加も抑えるため、高血圧の予防と改善に効果を発揮するのです。

(4)有害物質の代謝促進

食物繊維には体内に取り込まれたダイオキシンなどの有機塩素系環境汚染物質を減らす作用があることが実験からわかっています。ダイオキシンなどの環境ホルモンは、脂肪組織に濃縮されて蓄えられていきます。それが食物繊維を摂取することにより脂肪組織を小さくすることができ、その結果、有害物質の代謝を効率的に促進することができるのです。